ウルシと乳香 |
2016年2月号に面白い寄稿を見つけました。
「ウルシ林の奥に見た神秘」(福田達胤氏著)という題です。岩手県二戸市情浄法寺地区で営まれている国産漆について記されています。現在国内消費の97%は輸入漆で、残り3%のうちの約7割がこの地区で生産されているそうです。
「漆搔き」とはカンナでウルシの幹に傷をつけ、滲みでた漆をヘラですくうことです。シーズンは6月~10月で、400本の木から約75Kgの漆を掻きます。総本数を4分割し、4日で一巡します。漆はキズを塞ごうとして分泌される樹液なので、掻いた木が枯れないように中3日休ませて、樹勢を回復させながら採取していくのだそうです。キズの入れ方は図の通り!
キズの入れ方
逆三角形に
このように美しく、しかも能率的に様式化していくのは日本独特ではないでしょうか!
これで乳香搔きを連想しました。
『乳香と没薬』(D.Martinetz他著)というドイツ語の詳細な本をもっていますが、どこを調べてもこのように様式化した掻き方はでてきません。
ニュウコウジュの樹皮を剥ぐ
搔き具と乳香
乳香の涙
浄法寺漆は中国産の約5倍の価格で、日用品に使うには太刀打ちできませんが、国宝や重要文化財建造物の修復に使用され始めているといいます。
‘かぶれ’ることがなければ、ぜひ浄法寺のウルシ林を見に行きたいところです!
By Handhuegel